遊技場における諸問題とその対処
  • 大学名:国立信州大学大学院
  • 氏名:武田 康彦

  1. はじめに

     日本全国においてパチンコやパチスロを業としている遊技場数は、インターネットで関連情報を提供しているウェブサイト「P−world」で調べたところ(平成19年2月28日現在)、情報公開されている店舗だけでも12,274店に昇った。これだけ多くの店舗数があるだけでもその業種が巨大であることを計り知ることができるが、売上においても他の業種に引けを取らないほどである。いや、引けを取るどころか、約30兆円の売上を誇っており、自動車産業クラスの規模となっている。

    このような現状から、店舗の規模に違いはあるものの、従業員についても多くの者が携わっていることになる。また、店舗に付帯または関係する飲食店等の従業員を含めればその数は膨大なものとなる。

     これほどまでに遊技場(ホール)は巨大市場となっているにも関わらず、サービス業はサービス業でも、ギャンブルのサービスといった特殊性から様々な問題点を未だ抱えている。ここでは幾つかその点を挙げた上で、私なりにその対処を提案し、今後におけるより一層の産業発展を期待したい。

  2. 社会的信用の獲得に向けて
    1. ホールに対する社会の見方

       ホール関係者が近所や友人にいることは特別なことではない。地方のみならず多くの離島でもホールが営業している状態である。もはやコンビニエンスストアのような身近な存在である。それにも関わらず、人の職業がホール店員だと知った場合、偏見的なイメージを持つ人が多いと推察される。地方に行くほど偏見の目に遭う傾向が見られ、保守的な考え方を持っている人には反社会的と思われるようである。これは同じギャンブルを目的としている日本中央競馬会(以下、JRA)等とは異なるところである。JRAは何より以前に国営であった経歴や歴史があり、決して大多数の者が悪いイメージを抱いていないと推察される。現在でもJRAは農林水産省の監督下にあるが、ホールが経営するために関わる機関といえば行政といえども警察である。これだけがホールのイメージを悪くする原因とは考えられないが、ホール内や駐車場における窃盗及び傷害事件や子供の車中置き去りがニュース等で報道される度にイメージがダークになることに加え、パチンコ依存症で生活苦に陥る事案も少なくはなく、良いイメージを抱いているという人は皆無に等しいだろう。一度レッテルを貼られたものを剥がすためにはかなりの苦労が必要だが、ホールが長年の地道な活動を行えば、それも可能と考えられる。

    2. 信用の獲得に向けて

      例えばホールの一部では慈善事業として寄付金(玉・メダル)を集めているが、そのような地道な活動も社会的信用を得るためには今後必要なことであると考えられる。一部のホールが実施していても業界全体の向上はないことから、全ての店でそのような活動を行いたい。余り玉(メダル)は大半がお菓子やジュースになるが、それを慈善事業のために寄付するかどちらにするかを選べるようなシステムができても良い。

      また、最近は多くの店舗で電光掲示板を使用し宣伝しているが、宣伝の内容はイベント告知や機種紹介が大半であるように見える。確かにそれ以外を宣伝することは筋違いかと思うが、遊技場業界の性格から交通安全や防犯についても掲示してはどうかと考える。掲示頻度は少ないが、既にそういった掲示をしているホールもある。特に国道沿いに設置されているものは多くの運転者や歩行者の目に映るものであり、イベント告知や機種紹介のみを宣伝するだけでは依然として遊技場に対するイメージは変わらない。桃太郎旗等についても、下部に小さく交通安全等の標語を小さく載せるのではなく、単独で標語が書かれた桃太郎等を積極的に掲出したい。

      自主的にそういったことをすることで、少しでも大衆のイメージを変えることができるよう努めたい。

  3. 新しい顧客の獲得に向けて
    1. 団塊の世代

      今後、新しい顧客を獲得するにあたって最も重要な対象者は、1947年(昭和22年)から1949年(昭和24年)にかけて、いわゆる第一次ベビーブームに出生した「団塊の世代」の方々ではなかろうか。厚生労働省の推計によれば、その数はおよそ800万人と推計されている。公務員及び会社員等の多くは60才で定年であり、退職後の2007年から2009年にかけては余暇を求める退職者が増加すると思われ、この期間は絶好のホールPR期間と言えよう。都心のみならず、出身地または第二の故郷として地方に戻る退職者も多くなると考えられることから、地方のホールでも顧客獲得に向け対策が必要となる。

    2. 未経験者層

      ヘビーユーザー及びライトユーザーは既に遊戯を経験した者であることから、余暇ができればホールに出向くということになるかと思うが、少しでも関心や興味があったとしても遊戯を経験したことがない者にとっては、余暇ができてもいきなり一人で出向くといったことは少ないと考えられる。そういった関心や興味を持ち始めた未経験層を常に取り込むことを視点として考え続けることも必要ではなかろうか。昨今の芸能人やキャラクターがタイアップされた機種が主流となっている中で、メーカーのCMも多く放送されるとともに、様々なマスコミを通じて話題になっているものも多い。未経験者の誰もが一度は興味が湧いたのではなかろうか。

      では、その未経験者層を取り込むにあたり、ホールではどのような取り組みが必要となるか。

      まずは、初心者用の練習機の設置である。現在大半のホールでは貸玉が4円、貸メダルが20円となっている。1個(枚)に着目すると非常に少額だが、実際に当たるまでには多額の投資が必要となる。特に初心者は本当に当たるかどうかといった疑念も持つだろうし、練習もなしでいきなり身銭を切るといった行為には躊躇すると思われる。

      そこで、初心者用の試打用実機を店内の一角に設置してはどうか。確かに無料ということだけあって溜まり場になる可能性もあるが、一人当たりの制限時間の掲示や店員による注意等で回避できると推測できる。ゲームセンターと異なり対価(メダル)が出てこない点からも、溜まり場にはならないと考えられる。次に述べる説明書の常置はもちろんのことだが、新しい客に対する入口をこのようにもっと広げてほしい。

      次に、大半のホールにはどのように遊戯したらよいのか、その手順が書かれたパンフレット類が設置されていない。初めて遊戯する者にとって、積極的に遊戯方法を店員に質問する者は稀である。各メーカーが作成した機種紹介のパンフレットはあるが、何故遊戯方法が書かれたパンフレット類がないのか。確かに葛條y産業がリリースした「CRぱちんこ冬のソナタ」導入の際には、初心者の為に操作手順が書かれたパンフレット類が多くのホールで置かれていた。これは画期的であった。しかし、導入を開始してから数ヶ月後には、その遊戯方法が書かれたパンフレット類は姿を消していった。何故取り外したのか定かではないが、この点では顧客の立場には立っていない。パチンコはもちろんのこと、特に羽根物やスロットは、知らない者にとって操作方法が分からないため、台の横に操作方法を詳しく書いたパンフレット類を置き、周知させるべきである。

  4. 機種の選定

     パチンコ・パチスロユーザーが全盛期と比べ減少していることは周知のとおりだが、それについては多くの原因が考えられる。原因の一つとして、趣味・嗜好の多様化も考えられる。例えばそれは観光客の減少やスポーツ人口の減少からも明らかである。しかし、他に原因として考えられることは、現在でも低確率機が主流となっていることではないだろうか。確かに現在では甘確機と呼ばれる100分の1以下の機種がホールの一角を形成しているが、未だに多くの機種は約300〜400分の1の機種である。未だ新基準機と言われた約500分の1の機種が設置されているホールもある。低投資で当たればそれに越したことはないが、確率線上、多くは数万円を投資しなければ当たることができない。ヘビーユーザーはそれでよいかもしれないが、これでは新規の利用客に対して敷居が高すぎる。また、当たらなければ遊戯自体に嫌気が差してしまう。これでは本来楽しいはずのパチンコ・パチスロと言えるのだろうか。一撃で大量に獲得できる嬉しさはこの上ない楽しさであると考えられるが、例外を除いて通常はそれ相応の投資をした一部の人がその楽しさを得ることができ、たとえ低投資で当たったとしても、それ以降全て低投資で当たることは至難の業である。確かに大量出玉を獲得したいという利用客もいると考えられる。しかし、継続して当たらない状態が続いた時に、人は興味を削がずにまた遊戯したいと思うだろうか。連荘を売りにした低確率機のファンがいる限り、低確率機はホールにとって必要なものである。しかし、リピーターを付けるには、ホールに多くの甘確機設置が必要であると考えられる。

  5. 高齢者問題
    1. 規制の緩和

      現状ではパチンコ台のハンドルに係る固定は禁止されているところだが、日本では既に高齢社会を迎え、高齢者がホールで多く見かけられるようになったにも関わらず、ハンドルを自分の力で一定位置に維持しなければならない。腕置き台がある親切なホールも存在するが、ハンドルを厚紙等で挟めなければ、一日プレイすることは高齢者にとって至難の業となる。今後一層高齢者人口が増加する中で、この規制は検討しなければならない問題であると考えられる。規制が続くようであれば、ホールには何らかの身体的苦痛を和らげる装置がほしい。

    2. 出玉の管理

      現在、大半の店舗においては、出玉がそのままドル箱に入れられる仕組みである。そういった店舗では店員が持ち玉の上げ下げや清算に係る作業を行っているが、少量の出玉については人間の心理から自ら移動させたり清算を行うことがある。少量で店員を呼ぶことに対し気が引ける者も多い。清算なら未だしも移動となると腰が引けてしまう。

      しかし、玉・メダルともに原材料は金属であり、特に玉が複数集まると非常に重い。高齢者がたとえ500玉といえども箱を両手で持って移動することは身体能力的にかなりの負担で、特に日常的にこの作業を行っている店員には非常に重労働である。今後も一層高齢者は増え、若年者が減少する人口構造の変化が予測される見込であることから、客のみならず店員にも高齢化の波が押し寄せることが推察される。

      一部の店舗では玉数をデータ化してカードに入れるシステムも採られている。これは客や従業員に肉体的労働の強制を回避できるばかりでなく、従業員つまり人件費の削減にもつながり、客のスムーズな台移動が可能となる。しかし、このシステムのデメリットとして、導入費が高額なことはもちろんだが、客に対する出玉のアピールという点では物足りない。確かにデータランプで大当たり回数等は分かり、どれだけ出ているのか理解はできるが、視覚的にはドル箱を積んでいる方が人の目にはよく映ってしまう。

      しばらくは従来の体制であるとは思うが、ホール側(従業員)及び客側でも高齢化が進んでいることから、出玉をカードに入れるシステムまたはそれに代わるもの且つ視覚的に訴えることのできるシステムを構築したい。

  6. 環境問題

    ・副流煙対策
    煙草を吸わない人にとって、いざ台に座って気になるものが副流煙である。健康的にも良くないことは知られているところだが、すぐ隣から漂ってくる煙は非常に厄介なものである。だからといって利用客の喫煙率が未だに多い現状のホールでは、全体を禁煙にする訳にすることもできない。禁煙・喫煙フロアに分けたホールもあるが、社会が禁煙傾向にある中で、このまま現状を維持させることは難しいと思われる。今後は第1ステップとして休憩ルーム等の喫煙室を作ることで対応し、試験的に営業してみてはどうだろうか。

  7. 経営の効率化
    1. 営業時間の短縮

      大半の遊技場は午前9時〜10時に開店し、午後10時〜午後11時に閉店することから、多くの店では約12時間の間、店を営業していることになる。確かに土曜、日曜及び祝祭日は多くの利用客が休日であることから午前9時〜10時にオープンしても支障はないし、現に開店待ちの客も多くいる。しかし、平日となると新台入替等の特別な日でない限り、多くの店では店内に客はまばらである。このことから、主に経費となるホールスタッフの人件費や電気料を考えると、果たして午前9時〜10時にオープンすることが店の運営にも効率的であるのか疑問である。電気料は金銭的な問題だけであるが、人件費については費用削減と同時にホールスタッフの労働時間を短縮させることができ、もちろんこれは労働基準法で定められている法定労働時間内により近づけることもできるし、スタッフのメンタルヘルスや企業のイメージ向上に係るPRにもなる。従業員の多忙にも関わらず「作られる笑顔」より、ある程度余裕を持った「本当の笑顔」の方が客に対しても好印象を受けるのではなかろうか。私はほぼ慣例化されたこの営業時間を上述したメリットから短縮してはどうかと考える。

    2. 宣伝媒体

      宣伝については様々な媒体が用いられているが、特にコマーシャルについては、他のどの媒体よりも高額な宣伝費を要する。早朝や深夜帯に限らず、その時間帯よりもかなりの高額な宣伝費を要求されるゴールデンタイムにもコマーシャルが映されることもしばしばである。

      しかし、果たしてそのコマーシャルを放映することによりどれだけの集客力の効果があるのか疑問である。確かに新規開店告知に関するコマーシャルであれば、パチンコを知らない者でも興味をそそられるのと同時に、店そのものを周知できるということで有効だろう。それでは、コマーシャルの内容が新台導入やイベントに関することではどうだろうか。これはライト及びヘビーユーザーに向けられたものであり、対象はかなり特定される。ある程度の効果はあるにしても、ライト及びヘビーユーザー以外には全くもって無効力なものである。確かにコマーシャルの多くはパチンコ関連番組の合間に流れることから合理的ではあるが、もう少し自粛して、その分を客に還元してほしい。家族が揃ってテレビを見ているゴールデンタイムにコマーシャルを流すことはどうかと考える。

  8. 新たな戦略
    1. 情報公開

      もちろんホールは慈善事業ではなく、他の民間企業と同様に利潤を追求するものであるから、顧客が投資した額の100%またはそれ以上が顧客に還元されることはまずないと考えられる。通常は100%未満が顧客に還元されることになるが、一体どの程度まで還元されているのかホール関係者以外、現状は不透明である。JRA(日本中央競馬会)が主催する中央競馬であれば還元率(払戻金)は75%(単勝及び複勝を除く)と公表されており、決算についても公表している。未だホールの経営状況はベールに包まれたままであることから、具体的な還元率を提示することは難しいと思われるが、決算状況については誰もが見ることのできるよう店内に公表するようにし、客に対して信用性をアピールしてほしい。そうすればかなりのリピーターを期待することができるだろう。

    2. 各種イベント

      ホールは各種イベントを開催するが、大半は「○○の日」等と題し非常に抽象的である。これは非常に曖昧なもので、どこまで力を入れているのか、全くもって未知数である。出玉を獲得できて満足できればよいが、不発の場合にはイベント自体に疑念を抱いたまま終了してしまう。たとえイベントと題した日が出なくとも客に抗議されないことは、スーパーの安売りチラシと違うところである。

      これが続くと顧客はホールの信用を失い、そのホールから離れてしまう恐れがある。最初から力を入れていないイベントは問題外だが、例えばパチンコでは釘が開いていれば、たとえ出玉を獲得できなくとも顧客のホールに対する意気込みを感じることができ、次回へとつなげることができる。チラシ等を用いて広告する際についても、パチンコであれば具体的に命釘を○○mm開ける等と謳えば顧客に対し適切な広告表示をしていると同時に集客力にも大きく影響を与えることができると考えられる。

    3. 特殊な催事

       現在ホールで行う催事と言えば、お笑い芸人といった芸能人のミニトーク(ライブ)やマジックといった色物が主流である。爪を手入れするネイルアーティストに依頼して、女性向けに爪を見てもらうといったイベントも開かれていると聞く。確かに従来と比べると斬新的だが、顧客を固定化及び増やすために、さらに深く突っこみたい。具体的には、タイアップ機種である「CRぱちんこ冬のソナタ」(葛條y産業)や「CR新世紀エヴァンゲリオン」(フィールズ梶j等を題材として、製造業者の開発秘話(トーク)や声優等のミニコンサートを開いてみてはどうか。この二製品については稼動期間が非常に短命に終わっている大半の機種と違って、未だに根強い固定客が付いている。この二製品はゲーム性が優れているとともに、原作が秀逸なこともあって、その機種しか遊戯しない客もいるほどである。このことから、それに関するイベント(催事)を開いてリンクさせればその機種限定ではあるが、ますますそのホールに固定客が付くと予測される。

    4. 景品の多様化

      現在ホールに置かれている景品を見ると、非常に数が限られていることが分かる。一部のホールでは大手小売店と提携してかなりの商品を揃えているところもあるが、それでも多くの利用客はそれらの商品を選ばない。何故か。実際に並べられている商品を見ると、日用品や電化製品等がある。しかし、わざわざ出玉を日用品等にしたいと思うだろうか。電化製品に限って見ても、大手家電店に行けばもっと多種類のものを選ぶことができることから、それらと交換する者は稀である。ホールは日常的な空間ではなく、常にエキサイティングな場であることを鑑みれば、通常の小売店にはないようなものを揃えたい。例えばフィギュア等のマニア向けのもの、実機及びブランド物等である。あまりに高額なものは難しいが、そういったものがショーケースに陳列されていれば話題にもなると考えられ、このあたりについても一考の余地があると思われる。

    5. 貸玉・メダルの価格値下げ

       日本全国の99%に近い店舗では、貸玉1玉につき4円、貸メダル1枚につき20円が相場である。貸玉1玉につき1円という店舗も登場しているが、ほんの一握りの店舗しかないのが現状である。確かに1玉4円であれば景品の交換率は違うにしても出玉を得られればその額は大きなものとなる。しかし反すれば、大きく投資をした者はそれだけリスクを背負うことになり、現在のパチンコ(パチスロ)は甘確機でない限り相当な投資を必要とすることから、非常にギャンブル性の高いものとなっている。このことで借金苦に陥るケースもあるし、ゲームセンターと違って気軽にギャンブルを楽しめないのが現状だ。1玉1円ではフル稼働でも経営の面から厳しいものになるかもしれないが、試験的に半額の貸玉1玉につき2円から始めてはどうか。特に稼動率が良くない店舗では、話題性もあって効果的であると推察される。旅館・ホテルのように、設備は整っていても客がいなくては宝の持ち腐れである。資本は有効に活用したい。

  9. 結言

     ホールに勤務する友人がいる。その友人は小学校から成績優秀で、有名大学を卒業した。私は「よりによって何故パチンコ屋に入社を?」と感じた。私を含め、未だにパチンコに対する偏見は根強い。これほどまでに巨大産業であるにも関わらず、相変わらず世間から冷めた目で見られる。これではホール、特に従業員に対して不憫すぎるのではなかろうか。まずは一刻も早く世間から信頼される業界として一歩ずつ前進してほしい。


 
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