遊べるパチンコと地域貢献

文教大学国際学部

滝澤 佳祐様

(たきざわけいすけ)


遊べるパチンコと地域貢献

●はじめに

 私たちは大学のゼミで、レジャー産業の集客について研究しています。その中で、パチンコ産業が実は最大の売上げ規模を誇るレジャー産業であり、集客という面でも大変興味深い研究対象になっています。全国のホールは、実にさまざまな工夫をしながら集客に努力しているようです。

パチンコ業界はまた、売上げ面からみても大きな潜在的パワーを有してします。本来は地域社会や地域経済にさまざまな面で貢献できる産業だと、私たちは考えています。

そんなおり、私はこの懸賞論文のことを知り、応募させていただくことにしました。論文作成に関しては、仲間とさまざまな資料を検討したり、実際にいくつかのホールを訪ねたりしながら、パチンコ業界の最近の状況について分析し、問題提起をしてみました。

●減少するパチンコ人口

 まずはじめに指摘しておきたいのは、最近のパチンコ業界では売上げがそれほど変らないのに、顧客がどんどん減少しているということです。顧客が減るということは、どんな業界にとっても厳しい状況です。これはどういう事情でしょうか。

 そこで、レジャー産業では権威のある「レジャー白書」((財)社会経済生産性本部発行)のデータを参考にしながら、添付のような表をつくってみました。

 付表からわかるとおり、パチンコ人口(パチンコ・パチスロを1年に1回以上する人の数)は最近特に減少しています。かつては3,000万人近くいたパチンコ人口も、最近は1,700万人台と半分近くにまで落ち込んでいます。

この理由はパチンコ・パチスロのギャンブル性が強くなりすぎたため、と業界各誌は指摘しています。このことは、ここ10年間でパチンコ人口がどんどん減っているのに、業界全体の売上高は30兆円前後でほとんど変っていないことからもわかります。つまり、「一人当たりの消費金額がどんどん上がっている」=「ギャンブル性が強くなっている」ということなのです。

付表からもわかるとおり、95年で107万円という年間1人当たりの消費金額が、04年には165万円と実に5割以上も増えています。それだけパチンコ・パチスロは顧客にたくさんのお金を使わせるレジャーになってしまった、つまりはギャンブル性が異常に強くなってしまったということなのです。

※参加率とは1年に一回以上パチンコ・パチスロをする人の割合。

今やパチンコ・パチスロは、ちょっと手軽に楽しめるようなレジャーではなくなってしまっています。パチンコ・パチスロはマニアックなレジャーになってしまい、昔のように「身近で手軽な大衆娯楽」(これは業界でよく使われる言葉ですね)ではなくなってしまったということです。

ホールも最近はなにか鉄火場のような雰囲気になっています。特にパチスロコーナーは意識的にラスベガスのような演出をして、ギャンブル的な雰囲気をつくっています。私のようにあまりお金を持っていない人間は、今のパチンコには近づき難い感じですが、パチスロとなるといっそう近づき難い感じが強まります。

1,000台前後の巨大なホールも最近は目立ちます。新装開店のホールはいずれも巨大ホールで、友達と待ち合わせても携帯で連絡を取らないと簡単には探せないほど大規模になりました。そういう巨大ホールは、昔から地域にあったホールをつぶしてしまうほどの出玉合戦をしかけています。ホール同士が出玉合戦をしながら、顧客をあおっているといった感じです。

付表からもわかりますように、ここ10年間でホール事業所数が減少する―方で、1ホール当たりの設置台数は増え続けています。平均値ではここ10年間で60台程度の増加ですが、現実には小さいホールはどんどん少なくなって、500台以上あるいは800台以上のホールが大幅に増えていると聞きます。

特に1,000台を超えるような大きなホールが各地で増えているようです。私の通う大学の近くでも、そういうホールが最近できました。ここでは大きな駐車場をつくり、ギャンブル性を軸にした集客にやっきになっています。この結果、それまでそこそこ商売をやっていたホールには顧客がいなくなり、閑古鳥が鳴いています。そんなことをしているうちに、また顧客離れを引き起こしているのではないかと私は考えます。

ホールの不正の記事なども多いようですが、これもあまりにギャンブル性が高くなりすぎたからではないでしょうか。昔のようなパチンコであれば、不正をしてもやりがいがないはずだからです。

このように、業界のさまざまな悪弊は、行き過ぎたギャンブル性から来ているような気がしてなりません。パチンコをギャンブルとしてだけでなく(法律的にはギャンブルではありませんが)、もっと楽しい遊びにしてもらえないものでしょうか。楽しい遊びをさせてもらったという納得感でお客さまがお金を払う、そういうレジャーにならないものでしょうか。

●パチンコ・パチスロの規則改正で何が変る

 以上のような行き過ぎたギャンブル性から起こってくる諸問題について、警察庁や業界関係者も最近は特に危機感を強めているようです。詳しい内容はわかりませんが、パチンコ・パチスロに関する規則を改正して、ここ数年間のようなギャンブル性の強い機械をつくれないようにしたと聞いています。今年か来年には、これまでの機械(特にパチスロ)も撤去されるというような話も聞いています。

ねらいはギャンブル性を抑制してもっと楽しいゲーム性豊かな機械を世に出し、パチンコ・パチスロをもう一度「身近で手軽な大衆娯楽」に戻そうということでしょうか。これがうまくいけばけっこうなことだと思いますが、果たしてうまくいくのでしょうか。ギャンブル性に慣らされた今の顧客が逆に離れる可能性もあるでしょうし、そう簡単に離れてしまった顧客が戻るとも考えにくいからです。それでも、この改正の方向は間違っていないと私は思います。

ただし、ホール経営者の方がそう簡単には変らないような気もします。ギャンブル性で客を取り合うようなこれまでの商売のやり方は、すぐには変えられないと思うからです。機械も高いようですし、経営環境があまり変っていないこともその理由です。

実際にも、ホールの宣伝やチラシを見ると、集客の軸はやはりギャンブル性のように思います。出玉で客をあおるやり方はあまり変っていません。しかし、これではいつまでたっても昔の客は戻りませんし、新しい顧客の開拓にはつながらないでしょう。

ギャンブル性の強いパチンコ・パチスロは、集客や売上げ面では競馬や競輪の三連単と同じような弊害をもたらしています。最近は学生も競馬ができるようになりましたので私もたまに買いますが、三連単は当たれば大きいといってもほとんど当たりません。当たらないとお金は減るばかりですから、競馬は続けられないということになります。

このこともひとつの原因になって、最近の競馬や競輪は売上げをどんどん減らしているようです。もちろん不景気もあるでしょうが、そういう内在的な不振の理由もあるのではないでしょうか。ギャンブルあるいはギャンブル的なレジャーというのは、顧客にある程度勝たせてまた遊んでもらわないと、ビジネスとしてはうまく行かないということでしょうか。

いずれにしろ機械の規則改正で、特にパチスロでは「吉宗」や「北斗の拳」のようなギャンブル性の強い面白い機械を撤去せざるを得ないようです。パチンコはいろいろ面白い機械が出てくるような感じがありますが、若い客の多いパチスロは果たしてどうなるのでしょうか。入れ替えの機械の費用もかなりの金額になるといわれていますし、若者のパチスロ離れの心配など、ホール経営も難しい局面になっているようです。

これは専門家から聞いた話ですが、パチンコ・パチスロの機械の価格が高すぎるとのことです。粗利益が場合によっては半分以上もあるといわれますが、本当でしょうか。事の真偽はわかりませんが、常識的に見て機械の価格が何十万もするのは異常な感じがします。機械の価格は常識的には10万円もしないような感じがしますが、何故こんなに高いのでしょうか。また、何故こんなに高い機械をホール経営者は買うのでしょうか。普通の業界なら、常識外れに高いものには買う側が結束して安くするようにがんばるのに、ホール側が何故抵抗もなく買ってしまうのか私にはわかりません。

この業界はメーカーの言い分が通り過ぎるようにも思います。本当は顧客に近いホール側の意見が強く反映されなければいけないのに、何故かこの業界はメーカーが強いようですね。行政の経済感覚がないことも気になります。警察庁ですから、やはり犯罪や不正を撲滅することが第一の仕事になるのでしょうね。パチンコのような裾野の広い大衆レジャーは、経済性も含めてもっと広い行政の視野から振興をはかって欲しいものです。

いずれにしろ、ホールの経営環境が今後全体として極めて悪化することは間違いありません。ほんの数人しか客が入っていないようなホールも見受けられます。倒産するホールも増えているようです。

ホール全体が経営危機に陥ってしまうと、本当に一番困るのはメーカーではないでしょうか。メーカーが勘違いしているのは、機械を買っているのはホールだと思っていることです。機械を買っているのは実は顧客ではないでしょうか。顧客が遊んでくれるから機械が売れるのであって、これだけ顧客をいじめるような機械ばかりを売っていては、機械を実質的に買っている顧客がどんどん離れてしまいます。これではホールだけでなく、メーカー自身が次に経営危機に陥るのは目に見えています。メーカーはこのことに気がつかないのでしょうか。

私たちが求める機械は、やはり適度なギャンブル性で適度に勝つことができ、かつゲームとして面白いものではないでしょうか。あるいは、負けても「ああ、面白かったなぁ」と納得のいく機械ではないでしょうか。何故、こんな簡単で大切なことが実現できないのでしょうか。

こういう環境ができれば、私のようなお金のない学生も遊べるし、これから大量に退職する「団塊の世代」がもう一度パチンコ・パチスロに戻ってくるかもしれません。主婦や女性の依存症が問題になっていますが、そこまで行き過ぎないような女性ファンも増えてくるかもしれません。集客という点から見ると、ホールは地域社会でもともと楽しいレジャー環境だったはずですから。

●遊べるパチンコ・パチスロ

 私たちのパチンコ業界に対する意見は以上ですが、ホール経営者や関係者もかなり危機感を強めているのでしょう。昨年末に東京国際フォーラムで「遊べるパチンコ・パチスロ」のフォーラムという催しが開かれました。新聞広告で知って、私も面白そうなので行って来ました。

会場に着いてみると、たくさんの機械と入場者でびっくり。パチンコの人気も捨てたものではないなと思いました。まだまだ面白い機械をつくれば、たくさんのお客さんが遊んでくれるはずだと確信しました。実際にも昔使っていたような機械や新しい機械など、いろいろあってけっこう楽しめました。会場がちょっと狭いのが難点で、もう少し広く時間に余裕があったら楽しかったのになぁと思いました。いっそ東京ドームみたいなところでああいうイベントをやったらどうでしょうか。きっと話題にもなり、大勢のファンが詰めかけるだろうなぁと思いました。

会場にはホールの経営者だけでなく、メーカーの代表者みたいな人も来ていて、これからは遊べる機械をつくるのだと約束していました。約束を守って欲しいものですね。

―方、業界誌によると、ホール営業の面でもいろいろなアイデアを実行に移すところも出てきているようです。

広島には換金ができないパチスロ専門店があるそうです。メダル1枚10円で10枚から貸し出してくれるといいますから、なんと今はやりの「100円レジャー」ですね。同じ建物に「ドンキホーテ」が入っているらしく、景品もそこから提供されると聞きます。「換金しないホール」というふれこみですが、これはまるで「景品の出せるゲームセンター」といった感じですね。なかなか目の付け所がいいなぁと思いました。けっこう客もついているようなので、警察は法律をタテにこうした遊べるホールをつぶさないようにして欲しいものです。

また、玉1個2円やメダル1枚10円という、従来の半額で遊べるホールも出てきていると聞きます。これなら最近のギャンブル性の強い台でも遊べそうです。同じお金で二倍楽しめるわけですから。

考えてみれば、こういう多様な遊びを提供できるということこそ、まともな普通の考え方ではないでしょうか。私はゼミ旅行でラスベガスに行きましたが、ラスベガスのスロットでは1ドルで遊べる機械もあれば、25セントで遊べる機械もあります。こういう遊びのギャンブル性のランクを顧客に選択させるという考え方は、さすがにアメリカならではと思いました。日本では何故こうしたことができないのでしょうか。

法律的には玉1個4円以下ということになっているようですから、1個2円で貸してもいいようです。ただ、ギャンブル性に慣れた客がそういう台ではなかなか遊んでくれない、というのがホール関係者の見解だそうです。それでも、最近は大手ホールでも上記のような、半額で遊べるサービスを提供しているところもあると聞きます。一度業界あげて実験したらどうでしょうか。うまく宣伝すれば、パチンコのギャンブル性が強すぎてやめた人が戻ってきたり、新しい顧客が増えたりするかもしれません。

最近は機械の面でも、ギャンブル性を抑えた機械が提供され始めたと聞きます。昔のように当たりが多い機械ということでしょうが、こういう機械をどんどんつくって欲しいものですね。そして、そういう機械はあまり大きな売上げを稼ぎ出しませんから、メーカーにはぜひ安い価格で販売して欲しいものです。今はメーカーも利益を抑えることで、より多くの顧客を開拓して欲しいところですね。

このように、これからはギャンブル性のランクを、機械で出すか玉やメダルの単価で出すか、ホールや客が選べるようになることを期待します。客からすれば、あまりお金を使わないで遊べる機械と、たまには勝負してみたい機械と、いろいろな選択肢があるのが理想です。まあ、それでも今の機械はどれもこれもギャンブル性が高いわけですから、今出てきているようなギャンブル性の低い機械が増えることは歓迎です。初心者や高齢者や地域の主婦が、気軽に楽しめるような環境を業界につくり出して欲しいものです。

●パチンコホールと地域貢献

 集客という点からいうと、ホールが地域社会でもっと楽しいレジャー環境、複合的な楽しみのあるレジャー環境としての役割を果たして欲しい、と私たちは考えています。

 埼玉県のある町には、カードを使う機械が一台もなく、100円玉や500円玉だけで遊べるホールがあるようです。雑誌やインターネットサイトで調べてみると、台数がパチンコ・パチスロ合わせて300台ぐらいの小さいホールで、面白いのはいずれも全部現金機だそうです。もっとも、台の構成は実に多様です。いろいろなパチンコ・パチスロがあり、ホール関係者の話によれば、このホールの機械のギャンブル性は普通のホールの半分程度だそうです。

このホールでは、平日の昼間からけっこう客が入っていると聞きます。客の多くは高齢者や近所の主婦。まさに昨今のテーマに沿った理想的な集客です。ここではいわば500円玉で遊ぶわけですから、心理的にはお金を使い過ぎないという安心感があります。4回500円使ったら2,000円ですから、なんとなく納得感がありますね。

 ホームページによると、このホールでは曜日ごとにさまざまなイベントをやっているようです。「旬の野菜の日」や「果物の日」といった感じで、主婦に安く良いものを提供しています。おいしいパンや和菓子を販売する日もあるようです。店内では本格的エスプレッソ・バーのコーヒーも販売しています。雨の日傘サービスもあります。突然の雨でも玉25個、コイン5枚で傘と交換できるのです。

このホールは単なるパチンコホールではなく、そこに行ったらいろんな楽しみがある地域のレジャー施設といった感じです。集客とサービスのホスピタリティという面では、実に心憎い演出がなされていると思います。

 ―方、広い敷地にいろいろなレジャーを複合化させたホールもあります。これもインターネットや業界誌などで調べた施設ですが、いわばパチンコを核とした地域のテーマパークになっています。

 この施設は愛知県にいくつか立地しているようですが、関東では群馬県の太田市や静岡県の小田原市にもあります。

 施設構成は大変興味深く、パチンコホールにシネコン、ボウリング場、ゲームセンター、カラオケ、各種レストラン、100円ショップ、CDショップ、マンガ喫茶、理容店などです。天然温泉を提供している施設もあります。楽しそうですね。ラスベガスのように、ギャンブル的な施設だけで集客をはかっているのではなく、さまざまなレジャーを複合させているのが集客のポイントなのでしょう。

 すべてのパチンコファンは、ただギャンブル目的だけでホールに来ているとは限りません。楽しく遊ばせてもらえることを期待して施設に来るファンも多いはずです。そういう意味でこれからは、ギャンブル性だけに依存する店ではなく、埼玉県の店のような手軽に遊べる店、太田市の店のようなレジャー施設・レストラン・物販施設との複合施設をもっともっと増やして欲しいものです。ついでにいうと、今は貯玉のシステムがあるのですから、こうした複合施設に限定して、玉やメダルでいろいろな施設を利用できたらもっと楽しくなるのではないでしょうか。現行の法律では難しいかもしれませんが、規制緩和を期待したいところです。

そしてこうしたホールが増えたら、パチンコの客層がもっと拡がるでしょうし、新規顧客の開拓にもつながるはずです。ホールが地域社会にレジャーを通して貢献することにもなるのではないでしょうか。

 私は個人的にはパチンコが好きです。パチンコ業界がもっともっと元気になり、現在の厳しい状況を克服して、これからもいっそう楽しいレジャーとして発展することを祈っています。はじめに述べましたように、業界はそれだけの潜在的なパワーを持っているはずだと確信しています。