遊技金額の高額化 ―パチンコ・パチスロメーカーの寡占―

新潟大学経済学部

廣田 匡弘様

目次

論文の要旨

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1章         パチンコ業界の現状・・・・・・・・・・・・・・・・1

1節 パチンコ参加人口・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

2節 パチンコ業界の市場規模・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

3節 ファンのヘビー化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

4節 遊技場店舗数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

5節 パチンコ・パチスロメーカー・・・・・・・・・・・・・・・・6

2章         ファン離れの直接的原因・・・・・・・・・・・・・・7

  1節 パチンコ参加人口、市場規模からの分析・・・・・・・7

  2節 ファンのヘビー化からの分析・・・・・・・・・・・・7

  3節 アンケートからの分析・・・・・・・・・・・・・・・8

3章         ファン離れを引き起こすパチンコ業界の根本的問題・・13

  1節 パチンコ・パチスロメーカー寡占の現状・・・・・・・・・・・・13

  2節 パチンコ・パチスロメーカー寡占の引き起こす弊害・・・・・・・14

4章 パチンコ業界の今後の展望・・・・・・・・・・・・・16

  1節 ファンの今後望むパチンコ業界・・・・・・・・・・・・・・16

2節         パチンコ業界の今後の展望・・・・・・・・・・・・・・・・21

終章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

―論文の要旨―

パチンコ業界は、日本の余暇市場約82兆円の3分の1以上の規模を占めており、パチンコホール業界は約30兆円の巨大市場を形成している。パチンコは戦後から、手軽な時間消費型レジャー、いわば日本人の「大衆娯楽」として親しまれてきた。

しかし現在パチンコ業界では、深刻なファン離れが起こっている。本稿ではその原因を分析し、解決のためパチンコ業界はどのようにしていくべきか考える。

 1章ではパチンコ業界の現状を調査する。ここではパチンコ参加人口、パチンコホール業界市場規模、年間参加回数、ファン構成、遊技場店舗数、パチンコ・パチスロメーカーについて調査した。

2章ではパチンコ業界の現状を考察し、現在のファン離れの直接的原因について考える。

ここでは直接的原因は「遊技金額の高額化」であると主張する。まずパチンコの参加人口・市場規模から現実に「遊技金額の高額化」が起こっていることを示す。そして財団法人社会安全研究財団が平成9年と平成14年におこなった「パチンコに関する世論・有識者調査」のアンケート結果より、ファンの考えを読み取り、直接的原因は「遊技金額の高額化」であるのか探る。

3章ではファン離れを引き起こすパチンコ業界の問題点を指摘する。ここでは「パチンコ・パチスロメーカの寡占」が、「遊技金額の高額化」を引き起こすパチンコ業界における問題点であると主張する。そして「パチンコ・パチスロメーカの寡占」をもたらす、新規企業の参入をはばむ強力なシステム」について述べる。それはメーカー業界の組合と検定、膨大な数の工業意匠権という参入障壁となっていることである。そしてこの「パチンコ・パチスロメーカの寡占」から「遊技金額の高額化」までの流れを解説する。

4章で今後のパチンコ業界の展望を示す。ここでも「パチンコに関する世論・有識者調査」からファンの今後望むパチンコ業界はどのようなものか読み取り、考察し、全ての章よりパチンコ業界の展望を述べる。

最後に終章では本稿で述べたことを総括する。


テーマ:パチンコホール業界の展望に関するもの

遊技金額の高額化―パチンコ・パチスロメーカーの寡占―

はじめに

パチンコ業界は、日本の余暇市場約82兆円の3分の1以上の規模を占めており、パチンコホール業界は約30兆円の巨大市場を形成している。パチンコは戦後から、手軽な時間消費型レジャー、いわば日本人の「大衆娯楽」として親しまれてきた。

しかし現在パチンコ業界では、深刻なファン離れが起こっている。本稿ではその原因を分析し、解決のためパチンコ業界はどのようにしていくべきか考える。

 1章ではパチンコ業界の現状を調査する。2章ではパチンコ業界の現状を考察し、現在のファン離れの直接的原因について考える。3章ではファン離れを引き起こすパチンコ業界の根本的な問題点を指摘し、4章では今後のパチンコ業界の展望を示す。そして最後に終章で総括する。

1章 パチンコ業界の現状

この章ではパチンコ業界の現状を、1節パチンコ参加人口、2節パチンコホール業界の市場規模、3節ファンのヘビー化、4節遊技場軒数、5節パチンコ・パチスロメーカーについての五つの観点から探る。

1節 パチンコ参加人口

まずはパチンコ業界の現状を見るため、問題に挙げているパチンコの参加人口の推移についてみてみる。

11と図11を見ると平成6年まではほぼ横ばいでピークは2930万人となっているが、それ以降多少増加するときはあるものの平成16年の1790万人まで減少の一途をたどっている。ピーク時の約6割とファン離れは深刻なものとなっている。

11

               出所:「レジャー白書2005」(PLAY GRAPH WEBより)

2節            パチンコホール業界の市場規模

実際にパチンコファンに遊戯された金額を把握するためパチンコホール業界の市場規模をみてみる。

11と図12を見てみると平成7年の309020億円まで市場規模は拡大し続け、そこから平成13278070億円と少々縮小するものの、平成16年まで約30兆円の規模を維持している。

12

出所:「レジャー白書2005」(PLAY GRAPH WEBより)

3節 ファンのヘビー化

 表1−2はファンをヘビー、ミドル、ライトに区分し、平成9年と平成14年時での割合を比較したものである。ファンの月の平均遊戯頻度、1回当たりの遊技時間、1回当たりの遊技金額の観点で区別しており、それぞれ一番多いファンをヘビーと定義し、順にミドル、ライトとなっている。

 表12から分かるように平成9年時の調査から、平成14年の調査までに、パチンコにおいては、ライトの割合が減少し、ミドルの割合が増加している。パチスロにおいては、ライト・ミドルの割合が減少し、ヘビーの割合が増加している。いずれにしてもライトファンの割合は減少し、ファンはヘビー化している。 表11と表12を合わせてみると、参加人口の増加している平成7年あたりまでは平均参加回数はほぼ減少傾向にあり、ファンのライト化、いわば大衆化しているといえる。しかしそれ以降参加人口減少し始めると同時に、平均参加回数はトレンドとして増加しており、ファンはヘビー化しているといえる。

さらに詳しくみるとパチスロファンが増加している。平成9年ではパチンコ派80.7%、半々が8.3%、パチスロ派は11.1%となっている。そして平成14年ではパチンコ派75.3%、半々が7.2%、パチスロ派は17.5%である。5年間で11.1%から17.5%とパチスロファンが増加している。パチスロファンは、パチンコファンより一回当たりの遊技金額が高額で、遊技回数も多い。よって全体としてここからもファンのヘビー化を読み取れる。

11 ぱちんこ市場規模・参加人口・年間参加平均回数

市場規模

参加人口

平均回数

平成元年

152,710億円

--万人

--

平成2

169,460億円

--万人

--

平成3

232,990億円

--万人

--

平成4

263,240億円

2,860万人

25,7

平成5

274,210億円

2,870万人

25.1

平成6

304,780億円

2,930万人

23.4

平成7

309,020億円

2,900万人

23.7

平成8

300,630億円

2,760万人

22.5

平成9

284,260億円

2,310万人

23.3

平成10

280,570億円

1,980万人

25.5

平成11

284,690億円

1,860万人

24.6

平成12

286,970億円

2,020万人

23.9

平成13

278,070億円

1,930万人

25.6

平成14

292250億円

2,170万人

25.5

平成15

296340億円

1,740万人

26.8

平成16

294860億円

1,790万人

27.5

出所:「レジャー白書2005」(PLAY GRAPH WEBより)

12 ファン構成の変化

ファンの定義

構成比

月の平均
遊技頻度
(回)

1回当たり
の遊技時間
(
時間)

1回当たり
の遊技金額
(
)

H14

H9

パチンコ

2.7

2.5

11,500

ヘビー

12回以上

23%

23%

8.6

3.5

17,900

ミドル

月に13

38%

27%

1.7

2.9

12,300

ライト

1回〜23ヵ月に1

40%

50%

0.2

1.7

7,000

パチスロ

3.0

2.6

13,100

ヘビー

12回以上

26%

16%

9.3

3.9

23,400

ミドル

月に13

28%

33%

1.7

2.9

12,800

ライト

1回〜23ヵ月に1

46%

51%

0.2

1.7

7,500


    出所:財団法人 社会安全研究財団 (2003)「パチンコに関する世論・有識者調査」

4節 遊技場店舗数

遊技場軒数は表13、図13をみると平成7年まで18244軒まで増加しているが、そこを境に平成16年の15617軒まで減少し続けている。表1をあわせ見ると遊技場軒数は、参加人口減少に伴い、減少しているといえる。しかしパチスロ専門店は平成9年から増加し続けている。これは3節にあるパチスロファンの増加に対応したものだといえる。

13 遊技場店舗数

総店舗数

パチスロ専門店

平成元年

16,068

---

653

---

平成2

16,704

636

757

104

平成3

17,373

669

871

114

平成4

17,827

454

864

▲7

平成5

18,036

209

764

▲100

平成6

18,113

77

638

▲126

平成7

18,244

131

594

▲44

平成8

18,164

▲80

553

▲41

平成9

17,773

▲391

586

33

平成10

17,426

▲347

654

68

平成11

17,173

▲253

760

106

平成12

16,988

▲185

967

207

平成13

16,801

▲187

1110

143

平成14

16,504

▲297

1249

139

平成15

16,076

▲428

1381

132

平成16

15,617

▲459

1773

392

            出所:「レジャー白書2005」(PLAY GRAPH WEBより)

13

               出所:「レジャー白書2005」(PLAY GRAPH WEBより) 

5節    パチンコ・パチスロメーカーについて

1−4のメーカー一覧をみるとメーカーはパチンコ・パチスロ共に製造しているメーカーもあるが、それぞれ17社づつとなっており遊技場軒数に対して非常に少なくなっている。またパチンコ・パチスロメーカー数は近年ほぼ一定である。

14 メーカー一覧

パチスロメーカー

パチンコメーカー

IGTジャパン

アリストクラート

アルゼ

オリンピア

北電子

サミー

大都販売

タイヨー

アビリット

テクノコーシン

ネット

パイオニア

バルテック

平和

ロデオ

SNKプレイモア

オーイズミ

エース電研

奥村&ユーキ

京楽産業

サミー

SANMYO

サンセイアールアンドディ

三洋物産

大一商会&大一販売

タイヨーエレック

高尾

竹屋

豊丸産業

西陣

ニューギン

藤商事

平和

マルホン工業

まさむら遊機

出所:@グリーンべると

2章 ファン離れの直接的原因

1章1節から読み取れたように現在、パチンコ業界は深刻なファン離れが起こっている。このファン離れはどのような原因から起こっているのであろうか。本稿では最大の原因は「遊技料金の高額化」であると主張する。その他の原因としてパチンコ業界のダーティーなイメージ、例えば遊技機やホールの不正、脱税や暴力団とのつながり、等が挙げられるがここでは「遊技料金の高額化」について注目する。この2章ではその論拠を、1章のパチンコ業界の現状データ分析と、財団法人社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』のアンケートから、述べる。そして本章のデータはすべて『パチンコに関する世論・有識者調査』に依拠している。

1節 パチンコ参加人口、市場規模からの分析

 まずは1章1節と1章2節を参考にパチンコ参加人口、市場規模から分析する。1節では平成6年以降参加人口は減少している。2節ではそれにもかかわらず、市場規模はほぼ横ばいである。これより参加人口一人当たりのパチンコホールの売上げが上がっていることを読み取ることが出来る。すなわちファンの視点で考えると事実、年間遊技料金が増加しているのである。しかし「遊技料金が増加したから、参加人口が減少した。」といえるのだろうか。ここに因果関係が存在することを調べる。

2節 ファンのヘビー化からの分析

1章3節からヘビー・ミドルファンほど、パチンコに対し遊技金額と時間を使わないライトファンがパチンコへの参加をやめたことが分かる。

1章3節ではファンのヘビー化から分かる通り、ライトファンの割合が減少しミドル・ヘビーのファンの割合が増加している。しかし参加人口が全体として減少しているので、ライトだけでなくミドル・ヘビーファンも減少している。だが割合においてライトが減少しミドル・ヘビーが増加ということから、参加人口において、ライトファンがミドル・ヘビーファンより減少したといえる。これより遊技金額の増加に耐えられなくなったライトファンがパチンコをやめてしまったと考えることが出来る。

3節 アンケートからの分析

1、2節では1章のデータから分析し、パチンコ参加人口の減少は「遊技金額の高額化」にあることを示した。本節では財団法人社会安全研究財団が平成9年と平成14年におこなった『パチンコに関する世論・有識者調査』のアンケート結果より示す。この調査は全国5万人以上の都市部で20歳以上の男女3000人と、公務員、産業人、評論家・学者、マスコミ、その他文化人から各ジャンル200人の、計4000人を対象としたものである。よってここでは世間一般のパチンコに関しての意識をあらわしているものと考える。

@   1回当たりの遊戯金額

一回当たりの遊技金額は、パチンコが平均11500円(前回9800円)、パチスロが13100円(前回7100円)となっている。パチンコ・パチスロどちらも遊技金額が上がっているが、パチスロの遊技金額は前回から大幅に増加し84%増となっている。パチンコのライトファンは7000円、ヘビーファンは17900円である。またパチスロのライトファンが7500円に対し、ヘビーファンは23400円である。

21 パチンコ・パチスロの一回当たり平均遊技金額

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

A   1回当たりの限界金額

 一回当たりの限度金額は、1300(パチンコ)13700(パチスロ)という様になっている。またヘビーファンについてみてみると、15000(パチンコ)2300(パチスロ)が限界金額となっている。

22 パチンコ・パチスロの投資金額、投資の限界金額

     出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

B 今後の継続意向とやめたい(回数を減らしたい)理由

 今後の継続意向は、パチンコでは現状維持派67%、増加派4%、回数を減らしたい15.8%、もうやめたい14%であり、スロットでは現状維持派65%、増加派4%、回数を減らしたい19%、もうやめたい11.9%となっている。やめたい(回数を減らしたい)を思っている人は、パチンコは29.8%、パチスロは30.9%である。

 またやめたい(回数を減らしたい)理由としては、一番に「遊ぶのにお金がかかりすぎる」(パチンコ62.9%、パチスロ63%)、次に「あまり勝てなくなったから」(パチンコ46.4%、パチスロ40%)となっている。他の理由として「遊ぶのに時間がかかりすぎる」、「好きな台が少なくなった」や「機械やホールで不正があるのではないか」とあったが、いずれも15%前後となっている。

23 今後の継続意向

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

24 パチンコをやめたい(回数を減らしたい)理由

 出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

C パチンコをやめた時期と理由

 やめた時期は、「ここ5年以内にやめた」26%、「610年位前にやめた」18%、「1120年位前にやめた」25%、「20年以上前にやめた」26%となっている。

これより46%がここ10年以内にやめたといえる。

 やめた理由は、「お金がかかりすぎる」51%、「時間がかかりすぎる」25(前回34)、「あまり勝てないから」24%となっている。「お金がかかりすぎる」という要因は前回調査では34%であったが、今回の調査では約半数の人が挙げるものとなっている。

他の理由として「台が面白くなさそう」13.3%「遊び方が難しそう」12.1%「不正がありそう」11.1%などがある。

25 パチンコをやめた時期

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

26 パチンコを止めた理由

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

  考察

遊技金額の上昇と参加人口の減少

まずは@を見てみる。ここから参加人口の減少に、遊技金額の上昇は影響を与えているのではないかと考えることが出来る。それは平成9年から平成14年までの5年間で一回当たりの遊技金額は上昇しており、11節で見た参加人口の減少の時期と調度一致していることから考えることが出来る。

ファンの遊技金額の現状

次にAを見てみる。ここからファンは想定よりも「お金がかかりすぎている」状態にあるといえる。なぜだろうか。まず限界金額と@の実際の遊技金額を比較してみる。すると実際の遊技金額は、パチンコでは限界金額を超過し(遊技金額:11500円、限界金額:10300)、またスロットでは限界金額直前まで使っている(遊技金額:13100円、限界金額:13700)ことが分かる。さらにヘビーファンにおいてはパチンコ(遊技金額:17900円、限界金額:15000)・パチスロ(遊技金額:23400円、限界金額:20300)のどちらのファンも限界を超過して遊技している。以上の理由からファンは想定よりも「お金がかかりすぎている」状態にあるといえる。

ファンの遊技金額に対する認識

さらにBを見てみる。ここからファンの2割弱が「お金がかかりすぎている」状態であると感じ、それを理由にやめたい(回数を減らしたい)と考えていると読み取れる。なぜか。Bからパチンコ・パチスロファンは約3割の人がやめたい(回数を減らしたい)と思っていることが分かる。やめたい理由として、その約6割の人が「遊ぶのにお金がかかりすぎる」ことを挙げている。よってそのように言えるのである。

実際にパチンコをやめてしまった理由

では実際にやめたのはどのような理由からであろうか。Cを見てみる。ここから11節の参加人口減少は「お金がかかりすぎる」ことから引き起こされたものだといえる。なぜか。やめた人のうち「10年以内にやめた」のは46%である。1章1節で減少した参加人口はこの人達であるといえる。そしてCでは半数51(前回34)の人が、やめた理由として「お金がかかりすぎる」を挙げている。以上からそのように言うことができる。

また「お金がかかりすぎている」ことが理由でやめた人は、前回調査では34.4%で平成14年の調査では51%となっていることから、その傾向はより強まっているといえる。

 以上より11節のパチンコ参加人口の減少は「遊技料金の高額化」が原因であるといえる。

3章 ファン離れを引き起こすパチンコ業界の根本的問題

 2章よりファン離れの原因は「遊技料金の高額化」であることを示した。ではこの「遊技料金の高額化」はなぜ起こっているのだろうか。本章ではその根本的原因となるパチンコ業界の問題は、パチンコ・パチスロメーカーの寡占であることを主張する。

1節     パチンコ・パチスロメーカー寡占の現状

@ 寡占状態

パチンコ・パチスロメーカーは以前から寡占の状態にある。15節にあるようにメーカー数がそれぞれ17社程度ずつあるが、さらに表31にあるように上位7社でパチンコ69.0%、パチスロ91.9%となっている。

31

出所:矢野経済研究所(2002) FIELDS HPより)

A 寡占の原因

 ではメーカーの寡占状態をつくりあげている原因は何なのであろうか。本稿では、「パチンコ・パチスロメーカー業界には、新規企業の参入をはばむ強力な問題点が存在しているからである。」と主張する。この主張は猪野健治(1997)「パチンコ苦悩白書」と室伏哲郎(1998)「パチンコ・パチスロ白書‘98〜‘99」に依拠している。

     組合の存在

 この「新規企業の参入をはばむ強力なシステム」とは、まず1つの段階として組合の存在が挙げられる。日本遊技機工業組合(以下、日工組)というメーカーの組合が存在する。そして以下のようなシステムがあるという。

「パチンコ台を生産するには、日工組に加盟しなければいけない。しかし日工組に加盟するには、パチンコ台を生産していなければならない。」という。そしてさらに販売への条件として、「パチンコ台は、保安電子通信技術協会(保通協)の検定を受け認可されないと勝手に販売できない。が、保通協の検定を受けるには、日工組を通さなければならない。」という。

ここから考えれば、パチンコメーカー業界への新規参入は不可能であるといえよう。

     膨大な工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権)の存在

次に膨大な数の工業所有権の存在が上げられる。パチンコ台の工業所有権については、以下のようである。

「パチンコ台は、500種以上の部品から成り立ち、ビス(クギ)以外はすべて工業所有権がついている。特許権のかたまりといわれているゆえんである。」という。そして「それらの工業所有権は、日工組に加盟している19社が共同出資でつくっている鞄本遊技機特許運営連盟(日特連)が保有している。その日特連は、加盟社以外には工業所有権の使用を認めない。」とある。

公正取引委員会が独占禁止法違反疑惑で調査し19976月「特許権をプールし市場を独占していた」として、日特連に対し排除勧告を出し、日特連が受け入れた。その結果、後述の「加盟社以外に工業所有権を認めない」ということはなくなったが、今もって「パチンコは特許権のかたまり」であることは変わっていない。

     考察

これらより、組合と検定の問題、膨大な数の工業所有権という参入障壁の2つの問題が、パチンコ・パチスロメーカー業界の寡占状態を引き起こす原因となっていると考える。

2節     パチンコ・パチスロメーカー寡占の引き起こす弊害

本節では、寡占によって引き起こされる弊害から、「遊技料金の高額化」までの流れを追って考える。

@パチンコ・パチスロ遊技機の価格の高騰

寡占の弊害としては、「遊技機の価格の高騰」が挙げられる。

まず1章4節の表135節の表14を比較する。ホール数約18000店舗に対し、メーカーはパチンコ・パチスロ各20社弱となっていて、パチンコ遊技機市場は売り手市場となっている。この寡占により「市場の失敗」が起こり、完全競争均衡が達成されなくなる。過度の超過需要となり、価格をつり上げても売れることから、「遊技機の価格の高騰」が起こっていることが考えられる。

実際、必要以上に価格はつり上げられているのだろうか。価格について考える。猪野健治(1997)「パチンコ苦悩白書」によると、「数年前ある電機メーカーが、パチンコ台の開発に取り組み、様々な角度からコストを計算したところ1台当たり3万円という数字が出た。が、現実にホールに販売されているのは、CR機で118万円前後だ。」とある。ここから実際コストが3万円であることを考えると、価格は少なくとも18万円以下に抑えられそうである。

以上から寡占により「遊技機の価格の高騰」が引き起こされていると考えられる。

Aパチンコ・パチスロ遊技機の画一化、射幸性の増加

 またこの寡占状態により、遊技機のバラエティーが少なくなり、結果遊技機の画一化が起こる。これによりホール企業は商品による差別化が図れなくなり、出球のみの過当競争がおこり、ホール企業の経営を圧迫してしまうのである。

 またそのようにホール企業の経営圧迫が起こり、ホール企業に「短期的」には客単価の高い、ハイリスク・ハイリターンの射幸性の高い遊技機の需要がおこる。このようにして、さらに射幸性の高い遊技機の割合が多くなり、パチンコ・パチスロ遊技機の画一化が起こると考えられる。

Bパチンコホール企業の経営圧迫

 2に挙げたことからもパチンコホールは経営圧迫される。しかしそれ以上に、直接的に「遊技機の価格の高騰」からコスト増となる。現在パチンコホール業界は過当競争であり、集客のため、「新台入れ替え」を行わざるを得ない。そのため「新台入れ替え」は店舗にある遊技機がまだ使えたとしても行うこととなる。よって「遊技機の価格の高騰」はさらにホール企業の経営を圧迫するのである。

C遊技料金の高額化

 上記のAから遊技台の射幸性の増加、Bからホール経営圧迫により出球還元率(使った遊技玉にたいする、出てきた遊技玉の割合)の低下より、「遊技料金の高額化」は引き起こされると考えられる。

4章 パチンコ業界の今後の展望

これまでパチンコ業界の参加人口の減少について述べてきた。本章では1節で『パチンコに関する世論・有識者調査(2003)』から、ファンが今後望むパチンコ業界を示し、2節で結論として最後にこの参加人口の減少を食い止めるためにパチンコ業界はどのようになっていけばよいか私見を述べる。

1節     ファンの今後望むパチンコ業界

ファンの今後望むパチンコ業界を述べるため、まずは『パチンコに関する世論・有識者調査(2003)』を見てみる。

@ 再開意向と再開のための条件

 やめた人の再開意向は、「やってみたい」1(前回0.6)、「やるかも」6.6(前回8.1)、「分からない」17.5(前回21.9)、「やらないと思う」74.8(前回69.2)となっている。「わからない」を含めた再開可能性を持つ人は25.1(前回30.6)である。前回調査より「やらないと思う」人が増加している。

 また再開の条件としては「お金をかけないで遊べれば」58.0%、「勝てるようになれば」22.4%、「遊び方が分かりやすくなれば」17.8%となっている。ここでも半数以上の人が条件として「お金をかけないで遊べれば」を挙げた。

他にも「世間のイメージが良くなれば」14.4%、「パチンコ店に入りやすくなれば」12.7%、「時間をかけないで遊べれば」12.4%、「不正がなくなれば」10.5%、「面白そうな台が出てくれば」4.6%という条件が出た。

41 やめた人の再開意向

     出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

42 再開のための条件

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

A ファンが望むパチンコ・パチスロ台

 ファン望むパチンコ・パチスロ台は「お金を使わないで遊べる台」が88.8%である。詳細のファンの希望は、「お金を使わず短時間で遊べる台」34.7%、「お金を使わず長時間遊べる台」53.1%、「お金をかけても短時間で遊べる台」5.5%、「お金をかけても長時間遊べる台」5.3%となっている。

またファンの程度別の特徴を述べると、ヘビーファンほど「長時間遊べる台」を希望している。詳細はパチンコのヘビーファン66.9(パチスロ74.6)、ミドルファン57.0(パチスロ54.7)、ライトファン52.9(パチスロ57.6)となっている。若干パチスロのミドルファンと、ライトファンの数値が前後するが、これよりヘビーファンほど「長時間遊べる台」を希望しているといえる。

43 今後どんな台を望むか

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

44 今後どんな台を望むか

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

B    パチンコとパチンコ業界に対するイメージ

 パチンコのイメージは、「パチンコ=身近で手軽なギャンブル型レジャー」と考える人50%、「パチンコ=ギャンブル」と考える人50%と半々である。「パチンコ=身近で手軽なギャンブル型レジャー」と考える人の内訳はファン71%、無関心層39%となっている。ファンほどパチンコをギャンブル型レジャーと考えている。また有識者は56.5%がパチンコを「パチンコ=身近で手軽なギャンブル型レジャー」と考えている。

 パチンコおよび業界に対するイメージで、特に強いものは、「不況の中でも儲けている」75.2%、「経理の不正や脱税が多そう」73.6%、「暴力団と関係しているという感じ」66.0%、「遊技機やホールでの不正が多い感じ」56.5%となっている。次いで「地域社会に悪影響を与えている」43.8%がある。ポジティブなイメージとしては「社会によく貢献している」6.4%、有識者のみの回答となるが「ITを活用した先端産業」が52.8%となっている。

 イメージとして、「身近で手軽なギャンブル型レジャー」「ITを活用した先端産業」のポジティブなものと「経理の不正や脱税が多そう」、「暴力団と関係しているという感じ」といったネガティブなダーティーイメージが混在している。混在しているのだが、芳しくない項目がより多く挙げられている。

図4−5 パチンコは「ギャンブル型レジャー」か「ギャンブル」か

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

46パチンコ及び業界に対するイメージ

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

C レジャーとしてのパチンコの適正投資金額

 世間一般が適正と考えるパチンコ一回当たりの投資金額は、平均5500(前回4500)となっている。平均の内訳はファン8700円、潜在ファン6100円、無関心層4300円となっている。

47 レジャーとしてのパチンコ適正投資金額

出所:財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

     考察

上記の結果からファンの望むパチンコ業界について考察する。

 まず@からやめた人の25%はまだパチンコを参加する可能性があることが分かる。そして再開の条件として、その58%の人は「お金をかけないで遊べれば」を挙げた。ここから遊技料金が低下すれば、やめた人の約2割弱は参加再開の可能性があることが分かった。

 そしてAより現ファンについて考察する。Aより現ファンの約9割は「お金を使わず遊べる台」を望んでいることがわかる。

 そしてBよりパチンコをレジャーと考える人とギャンブルそのものと考えている人は、半々であることが分かる。また業界イメージからパチンコホールに対し、実際以上に儲けているイメージがあると読み取れる。それは「不況の中でも儲けている」、「経理の不正や脱税が多そう」、「遊技機やホールでの不正が多い感じ」というイメージから考えることが出来る。裏を返すと「ホールでは非常に高額な遊技料金を払っている」というイメージを持っているのではないかと考えることが出来る。

CとBと合わせ考察すると、半数の人がパチンコはレジャーであり、適正投資金額をみるに、現在では「遊技料金は高額」と考えていることが分かる。

2節 パチンコ業界の今後の展望

以上より、世間一般からすると「パチンコの遊技料金」は高額すぎなのである。そしてパチンコ業界は、今パチンコをより低額で遊ぶことが出来るようにすることを求められている。また本稿では、その根本的な原因は「メーカーの寡占」であることを述べた。そしてパチンコ・パチスロ遊技機市場への1番の参入障壁は、工業所有権であるということも分かった。

パチンコ業界の参加人口問題、軽くだが最後にふれた、パチンコ業界のダーティーイメージについても「遊技料金の高さ」は深くかかわっていることが分かる。よって今後のパチンコ業界をよりよくしていくためには「メーカーの寡占」を解決が急務である。そのためにはなど長期的視野をもち、特許の開放など行っていくべきなのではないだろうか。

終章 結論

パチンコ業界は、日本の余暇市場約82兆円の3分の1以上の規模を占めており、パチンコホール業界は約30兆円の巨大市場を形成している。パチンコは戦後から、手軽な時間消費型レジャー、いわば日本人の「大衆娯楽」として親しまれてきた。

しかし現在パチンコ業界では、深刻なファン離れが起こっている。本稿ではその原因を分析し、解決のためパチンコ業界はどのようにしていくべきか考えた。

 1章ではパチンコ業界の現状を調査する。ここではパチンコ参加人口、パチンコホール業界市場規模、年間参加回数、ファン構成、遊技場店舗数、パチンコ・パチスロメーカーについて調査した。

2章ではパチンコ業界の現状を考察し、現在のファン離れの直接的原因について考えた。

ここでは直接的原因は「遊技金額の高額化」であることがわかった。まずパチンコの参加人口・市場規模から現実に「遊技金額の高額化」が起こっていることを示したが、財団法人社会安全研究財団が平成9年と平成14年におこなった「パチンコに関する世論・有識者調査」のアンケート結果より、ファンの考えを読み取り、直接的原因は「遊技金額の高額化」であることがわかった。

3章ではファン離れを引き起こすパチンコ業界の問題点を指摘した。ここでは「パチンコ・パチスロメーカーの寡占」が、「遊技金額の高額化」を引き起こすパチンコ業界における問題点であるとわかった。そして「パチンコ・パチスロメーカーの寡占」をもたらす、新規企業の参入をはばむ強力なシステム」が存在することが分かった。それはメーカー業界の組合と検定、膨大な数の工業意匠権という参入障壁となっていることである。そしてこの「パチンコ・パチスロメーカーの寡占」から「遊技金額の高額化」が引き起こされていた。

4章では「パチンコに関する世論・有識者調査」からファンの今後望むパチンコ業界は、パチンコを「お金をかけずに」遊べることであった。そのため「メーカーの寡占」の解決は急務であり、長期的視野を持って特許開放などの対策を行うべきとの結論に達した。

<参考文献>

猪野健治(1997)「パチンコ苦悩白書」毎日新聞社

社会経済生産性本部(2005)レジャー白書2005社会経済生産性本部

日本遊技産業経営者同友会(1999)「パチンコ産業経営白書」経林書房

日本遊技産業経営者同友会(2000)「パチンコ産業経営白書」経林書房

溝上憲文(1999)「パチンコの歴史」晩聲社

村上政博(2000)「独占禁止法 第2版」弘文堂

室伏哲郎(1998)「パチンコ・パチスロ白書‘98〜‘99」現代書林

山田紘祥(2006)「アミューズメント」産学社

湯川栄光(2002)「【最前線】パチンコ・パチスロ業界 知りたいことがすぐ分かる!!」

KOU BUSINESS

<参考雑誌>

フジサンケイビジネスアイ

2004.7.7~2004.11.10)『パチンコ・パチスロ ホール経営の未来を探る@〜K』

三浦美浩(2005)『大衆レジャーづくりの決意』販売革新  Revolution In Retailing

<参考HP

@グリーンべると         http://www.adcircle.co.jp/greenbelt/

財団法人 社会安全研究財団HP  http://www.syaanken.or.jp/index2.html

日本遊技関連事業協会HP     http://www.nichiyukyo.or.jp/

Pachinko Village     http://www.pachinkovillage.ne.jp/

PLAY GRAPH WEB       http://www.play-graph.com/pdata/index.php

P-CAST WORKS         http://www.p-cast.info/index.html (リンク切れ)

FIELDS HP          http://www.fields.biz/

http://fields.biz/ir/j/press/2003/press_20031119_a.pdf

<参考資料>

財団法人 社会安全研究財団(2003)『パチンコに関する世論・有識者調査』

 http://www.syaanken.or.jp/02_goannai/11_gaming/gaming1503_03/pdf/001.pdf

 http://www.syaanken.or.jp/02_goannai/11_gaming/gaming1503_03/pdf/002.pdf

 http://www.syaanken.or.jp/02_goannai/11_gaming/gaming1503_03/pdf/003.pdf

社団法人 日本遊技関連事業協会(1996)

『パチンコ遊技と適度な射幸性―遊技機の在り方に関する検討委員会報告書 』